調査は実際のとこどんな感じ?

では実際に税務調査が入ったとして、なにを調査していくことになるんでしょうか。
「帳簿と領収書ですね」
税務署内での異動が7月にある関係で、調査の行われる最盛期は9月~12月。基本的には事前に「調査行きまっせ~」と連絡が入ってから来ることが多いのですが、必ずそうとも限らない。犯罪のにおいなんかした日には、逆に絶対連絡はない。そんな感じで調査はやってきます。そして、帳簿が正しくつけられてるか、領収書に変なものはないか、おかしな経費はないか、通帳も見せろだあーだこーだと調べていくわけです。
「いわゆるマル査とかいうのは、犯罪調査といった色合いになりますね。悪質な所得隠し・・・つまりは脱税捜査。この場合は当然のことながら強制捜査という形になります」
「やっぱ怖いですね・・・ぶるぶる」
「アナタがこっちになることはまずないですよ。悪質に隠せるほど、アンタに所得なんかないでしょ?」
「よ、よくご存じで!」
「わかるっつーの。・・・ゴホン、そんな話はどうでもいいや。アナタなんかの場合は、普通調査が入りますよといったら、来るのは税務署の職員さんですね。んで、任意調査って形になります」
「あれ?任意ってことは断ってもいいの?」
「まぁ、明らかに仕事の邪魔になるからってときは断っていいでしょうけど、向こうさんには「質問検査権」という権利がありますので、あんまし断ってばかりで調査に応じないと罰則が用意されています。だからあまり得はないんですよ」
では何が問題になりやすいのかというと、たとえば光熱費や車などの按分比率。自家用に何%使用して、仕事用に何%しようしてます~という項目ですね。このあたりが「え~どうなの?100%仕事用とかにしてるけど、この車だってちょっとは家の買い物に使ったりしてんじゃないの~?」とかつっこまれてくるわけですね。
え?仕事用100%にしてるんだけど、なぜか後部座席にチャイルドシートがついている?
調査のときは、隠しておきましょうね。
「あとは当然怪しい経費もつっこまれますね。この取材費用って家族旅行に行った金じゃないのとか、このゲーム機ってアンタの趣味で買ってるやつじゃないのとか」
「なんか想像しただけで背中に嫌な汗が流れますです」
「はっはっは、むこうさんもとりあえず全部言っといてみるかって節がありますから、言われたら従わなきゃってもんじゃないですよ。逆にハイハイ聞いてちゃダメ。ちゃんとこれこれこういう仕事で必要だった経費ですって主張しなきゃね」
ようするにあれですな、「経費として積んじゃったもん勝ち」と、「経費じゃないとハネちゃったもん勝ち」の、両者がとりあえず言ってみちゃえって主張しあうところからスタートするわけですぞ・・・と。
「はい、その通り」
とはいえ、そんな主張してばかりだと一向に前には進みません。平行線のまんまです。これって、どのへんが落としどころとして落ち着いていくものなんでしょか。
「は!よく耳にする「オミヤゲを持たせる」とかいうやつが、ここでバーンと飛び出してくるわけですか!?」
「ははは、よく耳にしますねー確かに。でも、そんなケース見たことないけどなぁ」
「え?じゃあ違うんだ」
「まぁわざわざオミヤゲは用意しないまでも、これとこれとこれは認めて修正申告するから、そのへんで手打ちにしましょうよ・・・という会話は出てきますかね。ポイントは「修正申告しますから」ってとこね」
税務調査が入った場合、最後のしめはどうなるのかというと、「これで確定しました」となって終わりを迎えることになります。ところがじつはその終わりって、2種類あるんですね。確定になった内容でこちらが修正申告をするケースと、税務署さん側が「お前の税金はこれだ!」と勝手に決めちゃってこちら側に押しつけてくるケース。ちなみに後者のことを「更正」と呼びます。
「ところが税務署さん側にしてみたら、この更正ってのはやりたくないんですよ」
「え?なんでですか?勝手に決めて終わりにできるんなら話が早くていいじゃないですか?」
「いやいや、逆にめんどくさいんです。アナタがあくまでもその内容を認めないとなって異議申立とかした日には、やれ裁判だーとなって延々ひっぱられることになっちゃいますから」
その点修正申告であれば、それは本人が本人の意思に基づいて修正を申告したってことだから・・・。
「おお、もめる要素がなくて綺麗さっぱり終わりにできると」
「そう。だからそこをついてですね、「そういうことにしてやるから、ここで終わろうぜ」とニコやかに話し合うわけですよ。ククククク・・・」
「なるほどー、クククク」